昔から「ほめ育て」ということがよく言われます。「叱らずにほめて育てると、子供は自分に自信を持ち、さまざまなことにチャレンジできる人間に育つ」。要は、「ほめて育てて、自尊心を高めよう」というわけです。
アメリカでの研究によれば、「自尊心の高い子(自信のある子)は、反社会的な行いが少なく、学習態度もまじめで、学力も高い傾向がある。」という結果が出ています。
ところが話はそれで終わりません。その結果を受けて、アメリカ・カリフォルニア州では、「子供に自信を植え付ければ、学力や意欲が高まり、反社会的行為を未然に防ぐことが出来るのではないか?」という考えから、自信を植え付けるような働きかけがどのような影響を与えるのか?という調査が行われました。
結果は、学力の低い生徒に自信を植え付けるような働きかけを行った場合、学力が余計に下がったのです。 つまり”自信を持つような働きかけ”は、逆効果だった、ということです。
その研究では結局、「自尊心(自信)」 → 「学力の向上」 という関係ではなく、
「学力の向上」 → 「自尊心(自信)」 という関係があることが分かったのでした。
また、ほめる際にも、「頭がいいね」とか、「才能があるね」と能力をほめられた子よりも、「よく頑張ったね」と成果をほめられた方がその後の成果が伸びる、という研究結果もあります。 能力をほめられると、努力するモチベーションが下がり、成績も下がる傾向があるそう。
結局、「根拠のない自信は、努力する意欲を減退させ、努力を通じて得られた自信は、その子の力になる。」ということではないかと思います。
これらは、「教育心理学」とか「教育経済学」といった学問の成果ですが、腑に落ちる結果もあり、色々と考えさせられます。
(「セミナー通信」より転載)
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遅読猫 (火曜日, 24 8月 2021 14:25)
とても勉強になりました。
ありがとうございます。